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シスターズ・ブラザーズ〜不思議に魅力的な西部小説

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たまには読書の感想を書いてみます。つい最近出版された「シスターズ・ブラザーズ」(パトリック・ディビット著)を読みました。書店で見つけた時は、本の表紙(Skull Illusion)にひきつけられたのです。ま、いわゆる”ジャケ買い”ですね。

買ったからには…と、読み始めたらこれがなかなか面白く、するすると読めて、数日で読了できました。

1850年代、ゴールドラッシュにわく西部を舞台にした物語で、主人公は悪名高き殺し屋兄弟。暴力と死が日常の、粗野で冷血なふたりが旅を続けます。物語の語り手は、殺し屋の弟・イーライなのですが、この語り口が不思議な魅力にみちていて、彼とともに殺伐とした世界を渡り歩くことにひきつけられていくのです。イーライは切れると何をするかわからない粗暴な男なのですが、人間観察にすぐれていて、どこか心優しく、詩的であったりもします。彼の目を通した"死と暴力の日々"が、なんだか人間の根源的な部分を刺激してくるようで、時に不快に思ったりしながらも、作品世界にのみこまれる楽しさがありました。(まあ、あまり女性読者向きの小説ではないかな……)

表紙のことも少し。見返しに、表紙イラストの作者として、Dan Stiles という名前が記されていたのでネット検索してみました。ポスターなどを手がけるアーティストで、シンプルな造形が持ち味。なんとなく、Noma Barと作風が似ている感じですが、もちろんオリジナリティにあふれた作家です。彼のページで見つけた、下のようなデザインがとても気に入りました。

 


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